
2025年5月27日号 (通算25-04号)
中村桂子 いのち愛づる生命誌講座(その4)の開催報告
5月10日(土)、六花亭札幌本店「ふきのとうホール」にて、JT生命誌研究館の名誉館長であり、小学校“農業科”教育イニシアティブの共同代表でもある中村桂子さんの「いのち愛づる生命誌講座(その4)」を開催しました。
今回で第4回となる本講演は、「人類はどこで間違えたのか」をテーマに掲げ、中村さんの長年にわたる生命誌研究をもとに、現代社会における土木・教育・農業・医療を生命誌の視点から再考するというもの。
40億年にわたる生命の歴史を振り返りながら、人間という生きものの原点を検証し、「人間は生きものであり、自然の一部」という事実をもとに、上から目線ではなく、他の生きものと同じであることを認識しながら謙虚に生きることの大切さや、「あなたが生きものであること」を「農業で学ぶ」ことが、日本の社会を変えていく力となることを中村さんはやさしい言葉で語られました。
また、講演では「土」の重要性にも焦点が当てられました。「土」は生態系の基盤であり、人間の生き方にも深く関わるものとして、中村さんは熱く語られ、参加者の胸に深く響く内容となりました。
ほぼ満席となった会場では、多くの参加者が講演に強く共感。「これから人はどう生きるべきか、未来を考えるうえで重要な視点だった」「私たちは便利さを求める一方で、何を犠牲にしてきたのか、改めて考えさせられた」など、さまざまな感想が寄せられ、生きものとしての人の生き方を考える充実した時間となりました。
中村さんの講演は、単なる学問的な考察にとどまらず、現代を生きる私たちに、その在りようを強く問いかけるものでした。

講演会終了後、中村さんが提唱する“小学校教育に農業科を”という理念に共感する道内の市町村、農業団体等による『小学校“農業科”教育イニシアティブ』の情報交流会も行われました。
中村さんを囲みながら、農業教育の取組事例について情報交換が行われ、中村さんが語られた「生きる力を育む学びの原点は農業にある」という農業の持つ教育的価値を改めて認識する貴重な時間となりました。

(記事:事業部)