
2025年5月13日号 (通算25-03号)
野火、山火事、災害、事故には遭いたくない!
消防・救急の現場訪問!
2025年3月、国内では岩手県、岡山県、さらに愛媛県と大規模な山林火災が多発した。農業現場では、今も野焼きを行うこともあり、山林に近い場所がほ場、仕事場というケースも多い。さらに、農機具の事故や風水害などの自然災害も起こり得る危険要素がある。
一方で、農業従事者には地域の消防団に入るなど、地域の安全を守る自負心に溢れている人が多い。
今回は、札幌近郊で農地もあり、山林も広がり、さらには工業団地や野球場もあるという北広島市の消防本部を訪問し、どのように火災や災害、事故から身を守ると良いか、そして万が一災害や事故に遭った場合にはどうすれば良いのかを取材した。
お話を伺ったのは、北広島市消防本部予防課消防司令補の宮澤祐介さん、同じく予防課消防士長の山口翼さん、警防課消防司令補の石黒雄己さん、警防課消防士長の後小太郎さんの4名。
<山林火災、野火の状況と対策>
▶予防課 山口さん
北広島市でも野焼きが原因で火災になった事例もあります。特に春先や秋口は“空気が乾燥して注意が必要”です。全国的にも野焼きが原因となる火災(山林火災に限らない)が増えているので、注意喚起をしています。
▶HAL上野
煙が見えたら119番した方がいいのですか?
▶警防課 後さん
火災の可能性があれば、ためらわず119番して欲しい。消防では、調査として現地に赴き確認します。

▶HAL上野
農業現場で野焼きをする場合はどうすればいいのですか?
▶予防課 山口さん
消防署に相談、届出をお願いしています。注意事項として、当日の天候状況の確認をして欲しい。特に風が強くないか、空気が乾燥していないか、そういう点を注意して欲しいです。
▶予防課 宮澤さん
野焼きをやる場合には、「火をつけたらそこを離れない」「複数人でやる」「いつでも火を消せるような水などをしっかり用意する」ことが大事です。
<山菜採りの注意>
春先の山菜や秋のキノコと、山に一般の方が入ることもあります。万が一、遭難してしまうと地元消防や警察、あるいは役場(市役所)や消防団が捜索に向かうことになります。北広島市の状況を伺いました。
▶HAL上野
北広島市でも山菜採りの事故などあるのですか?
▶警防課 後さん
北広島市でも毎年発生しています。2024年度は2件の遭難事故があり、出動しています。北広島市では、消防や警察、そして市役所の方も加わり捜索隊を編成します。
▶HAL上野
実際の捜索はどのようにするのですか?
▶警防課 後さん
捜索隊が横一列に並んで山の中を探していきます。
▶HAL上野
それは、すごく大変なことですね。
ほかに注意点があれば教えてください。
▶警防課 後さん
携帯電話を忘れずに持つことが大事ですが、GPSを入れることが大事です。また、現在地を知らせる機能を持つアプリも最近はありますので、活用して欲しいです。
<自然災害、河川氾濫にはどう対処するか>
▶HAL上野
ここ数年、ゲリラ豪雨や河川の氾濫も増えているように思います。この注意点を教えてください。
▶警防課 後さん
河川や用水路を確認しに行きたくなる気持ちは分かります。しかし、命が最優先です。国土交通省などの河川情報などで情報収集をして欲しいです。
万が一、災害に遭ったら119番に電話をしてください。
<119番通報のポイント>
▶警防課 後さん
119番通報のポイントは、冷静に指令担当の質問に答えてください。指令員は、まず「どうしました」と聞きます。次は「住所」を伺います。その2つ(どうした、場所)で、救急車か消防車が出動します。
また、2025年(令和7年)秋から、北広島市消防を始め、札幌市消防局、江別市消防本部、千歳市消防本部、恵庭市消防本部、石狩北部地区消防事務組合消防本部(石狩市・当別町・新篠津村)のエリアは「札幌圏消防指令センター」(所在:札幌市)が一括して119番通報に対応することになりましたので、確実に「市町村名」から言ってください。例えば「青葉町」などは札幌市にも北広島市にもあるので、注意が必要です。
<これらの模様は>
伺った内容は、これだけではありません。警防課の石黒さんは道庁の防災ヘリ隊員としての経験もあり、実際の救急搬送や上空からの捜索、さらには放水の経験談なども伺いました。
皆さん、カメラの前で少し緊張気味でしたが、時に少しだけ笑い話もしながらインタビューを行いました。このインタビューの様子は、後日HAL財団公式YouTubeチャンネルで公開いたします。
<訓練の様子や消防車、資機材を拝見>
取材を終え外に出ると、今年の新入職員の訓練が行われていた。消防の放水は非常に大きな力が必要だ。ホースをしっかり固定するには足に力を入れて、と先輩職員から指導されていた。
山林火災などで使用する資機材「背負い水嚢(すいのう)」に約20Lの水を入れ、さらに防火服や通常の機材で20㎏もあるというのだから、合計で40㎏にもなる。それで傾斜の地面を歩くのは大変な困難を伴う。
救助工作車に積載している資機材。交通事故、傷病者の救助、水難事故、消防現場とありとあらゆる災害現場で使われる救助ツール。
資機材の紹介や仕事を説明してくれたのは、救助隊長の杉淵さん。


これから、農作業も本格稼働の季節だ。
燃料を使う農機具や施設(乾燥施設や倉庫)、さらには毎年のように見舞われる自然災害など危険が多い。今回のレポートで改めて「日々の点検」や「危険に近寄らない」「安全を確保する」という当たり前のことが大事であると再認識した。 農業の現場でも安全に留意して仕事をすることが大事だ。
また、それぞれがプライベートの時間では、火の始末、火の用心、さらに交通安全に心がけるなどして、できれば119番のお世話にはならないようにしたい。
しかし、いざという時には、119番に助けを求めることをためらわずに、冷静に行えるようにすることが肝心だ。
このような防災、消防、救急に関して知りたいこと、疑問があれば地元の消防署に相談することが非常に勉強になる。 また、各地の消防署では消防団員を募集しているので、相談に赴いたら消防団についても訊いてみては如何だろう。
▶取材協力
北広島市消防本部 :北広島市北進町1丁目3-1
北広島消防署 :同上住所
北広島消防署大曲出張所:北広島市大曲2番地8
▶ご協力いただいたみなさん
北広島署消防本部
警防課長 消防司令 矢村さん
警防課 消防司令補 石黒さん
警防課 消防士長 後さん
予防課 消防司令補 宮澤さん
予防課 消防士長 山口さん
北広島消防署
消防司令補 杉淵さん(レスキュー隊長)
北広島消防署大曲出張所
消防司令補 板林さん
消防司令補 富島さん
消防司令補 池田さん
北広島消防署 新入職員の皆さん
(取材・記事:企画室 上野)