2026年1月15日号
通算25-07号
東川の丘から共生社会への芽
人口8600人の東川町にある学校法人「北工学園」は、半世紀以上の専門学校の歴史を持つが、運営を担ってきた建設会社が7年前、学校経営からの撤退を表明。当時の松岡市郎・東川町長からお声がけをいただき、経営母体の再構築を担うことになった。
学校経営の経験はなく、経営能力も乏しいが、この学園に“希望”を抱いたのは、東川らしく4学科の小規模な姿に再編した上で、「介護福祉」や「子ども教育」の人材養成コースと、外国人向けの「日本語」コースを併設した学科構成の持つ可能性だった。「縦割りを越え、それぞれの機能を横軸に重ね合わせれば、時代が直面している社会的課題に向き合えるかも知れない」。
少子高齢化が進む中で、介護福祉分野の人材不足は、近い将来、北海道で4万人、日本全体では70万人とも予測され、外国人材に頼らざるを得ない時代を迎えている。そうした状況下で、外国人労働者を、従来のような「安い労働力」と捉える発想では、互いに支え合う共生社会への道を自ら閉ざすことになる。国籍の違いを超えて、共に暮らす社会を築いていく上で、この小さな専門学校の有する「日本語教育」機能の蓄積は、大きな意味を持つ。
そうした思いで東川町と連携し組み立てた新横軸の一つが、「日本語学科」と「介護福祉科」をつなぐ新しい修学制度の創設だった。
「日本語学科」に学ぶ留学生へのアンケートによると、その3割近くが、介護福祉士として日本社会で働く意思を持っていることが判明、これを踏まえて2019年、「日本語学科」を修業後、「介護福祉科」への編入を希望する者に対し、その2年間の学費を″全額免除″する仕組みを制度化した。制度の創設は、人材逼迫に悩む道内自治体の共感を呼び、そうした自治体で構成する「外国人介護福祉人材支援協議会」の協力も得て、2024年迄で83人の外国人介護福祉士を道内各地に送り出すまでになった。
先日、その「日本語学科」で10月期の入学式が行われ、秋の日差しを受けながらアジア10カ国・75人の新入生が門をくぐった。この入学で「日本語学科」の在校生は、併せて199人となる。
札幌ならともかく、東川は、世界の人たちにはほとんど知られていない小さな町だ。そのまたはるか郊外の小高い丘にひっそりと建つ学びや。コンビニひとつない静寂の中で、ひたむきに学ぶアジアの若者たち。その幾人かは数年後、介護福祉士としてこの丘を巣立っていくはずだ。その未来への道を思うと、胸に熱いものが込み上げてくる。
※朝日新聞より加筆修正






