HAL財団

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WEB版HALだより「テキスト版」

2023年6月20日号(通算23-9号)

~短期集中レポート~ “農業で学ぶ” 小学校における「農業科」教育の道を拓く挑戦(6)

磯田 憲 一

2022年11月15日~16日の日程で喜多方市を訪問したのは、美唄市から板東知文市長、村上学務課長など4名、HAL財団からは田尻忠三常務理事と私の、合わせて6名でした。喜多方市では、遠藤忠一市長、大場教育長、中野学校教育課長補佐(指導主事)が対応してくださいました。

(写真提供:美唄市教育委員会)

 喜多方市教育委員会から説明のあった事柄は、概ね次のようなものです。

  • 2006年からスタートした喜多方市内小学校における「農業科」は、特区制度廃止後も総合学習の一環として継続している。
  • 福島県内もの含め「農業科」の取り組みは広がっていないが、授業としての「農業科」教育の効果は、計り知れないほど大きなものがあると考えており、喜多方市としては、これからも継続していく方針は堅持していく。
  • 「農業科」は、市内17小学校で実施している。ほ場の確保などの課題はあるが、農業者の協力をもらいながら継続している。

(写真提供:美唄市教育委員会)

  • 喜多方市の副読本は、制作から相当の時間が経過しているが、今のところ改訂版づくりは、予算上の制約もあり予定していない。
  • 今回、美唄市、HAL財団の訪問をいただき感謝している。今後、両市の子どもたちの交流などができると良いと思っている。
  • HAL財団が進めている「大地の侍」の上映セミナーには(会津藩としても)大変興味がある。喜多方市でも上映の機会があると良い。

 喜多方市の、以上のようなお話に対して、HAL財団からは次のような事柄を伝えました。

  • 県内外への広がりはないとしても、農業科教育の意味、価値への深い思いをお聞かせいただき、嬉しく心強く思う。
  • 喜多方市内外への情報発信や政策効果のアピールに苦労されているとのことだが、こうして遠く北海道から板東美唄市長らが訪問したのは、喜多方市への深い敬意を込めてのこと。喜多方市の先駆性に対する美唄市長らの思いと来訪の意味を、喜多方市の情報発信の中で活用していただいて良いのではないか。
  • 美唄市も来年度からのスタートを目ざして、さまざまな手配を整えつつある。両市の「農業」への敬意を込めた先駆的な取り組みを、日本各地に広めていくために、両市の連携をお願いしたい。
  • 生命科学のレジェンドと言われる中村桂子さんは、喜多方市に“頼まれもしない”のに、喜多方市の先駆的取り組みを熱く語り、農業に学ぶ喜多方の子どもたちの「生きる力」に溢れた言葉や発言を紹介されている。喜多方市も、市政を担う皆さんが異動で交代し、近年中村桂子さんとの直接的接点はないかもしれないが、中村さんの次代を見据えた深い知見に学ぶことが大切だと感じる。改めて中村さんのお力をいただき、中村さんが語り続けている「知の世界」を、喜多方市の力として活かすべきではないかと思う。

 美唄市とHAL財団が思いを共有することで実現した喜多方市訪問。これからの方向性を考える上で、とても貴重な学びの旅になりました。とりわけ、全国1800に及ぶ自治体の中の唯一“農業で学ぶ”ことに深い意味と価値を認め、これからも「農業科」教育を揺るぎなく進めていこうとしている喜多方市の方針を確認できたことはとても意義深いことでした。

(注:肩書は当時のもの)

 (第7号に続く)

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