
2025年10月14日号 (通算25-13号)
日本ダッタン新そば祭りへ
サッポロさとらんどにて、第20回日本ダッタン新そば祭りが開催されていたので、新そばを味わいに向かった。北海道ダッタンそばの会が主催し、道内の会員生産者が栽培、収穫したダッタンそばを楽しむことができる祭りなのだ。
もりそば、きのこそば、などの、そばはもちろんのこと、なんとダッタンそばを使ったあんかけ焼きそば、ザンギ、ガレットなどの販売も行われていた。

きのこそば

ダッタンそば粉を使ったガレット
その他にも、昔ながらの「石臼挽き」による製粉体験や、そば打ち体験などそばを楽しむための様々な催しがあった。
元々、ダッタンそばは、ポリフェノールの一種であるルチンの含有量が多く普通のそばと比べてもその量は約100倍にもなるという。しかし、従来の品種では子実に含まれるルチン分解酵素活性が強力であったため、食品製造工程で肝心なルチンの大部分が分解されてしまうという問題点があったのだ。そのうえ、ルチンが分解されてしまうと、分解により生成される「ケルセチン」が原因で、ダッタンそばが苦蕎麦(にがそば)と呼ばれてきたように強烈な苦みがあり、それゆえ広く普及してこなかったのだ。
苦みやルチンの分解は、特殊な加工等である程度抑えることは可能であったが、食感や風味の劣化、製造コスト等の問題があったため、苦味が弱くルチン分解活性の弱いダッタンソバの新品種の育成に期待が集まっていた。
農研機構は、苦味とルチン分解活性の極めて弱い系統「f3g162」に、収量性や成熟期等が優る標準品種「北海T8号」を交配した「満天きらり」を育成。ダッタンソバとしては交雑育種で育成されたはじめての品種が誕生した。
「満天きらり」は、食品中にルチンが多く残る一方で、苦みが弱く食味も良い。実際食べてみても、苦みはほとんど感じず、通常のそばと変わるところは感じられなかった。

満天きらりのチラシ(農研機構)
ダッタンそばの作付け面積は大部分を北海道が占めているが、中でも雄武町は1位の作付け面積を誇っている。平成27年度には、『ダッタンソバ「満天きらり」を用いた耕作放棄地解消と6次産業化事例』で、雄武町と(有)小林食品、(株)神門が、第13回産学官連携功労者表彰~つなげるイノベーション大賞~における農林水産大臣賞を受賞している。
受賞のポイントは、新品種の開発を契機として、産学連携によるコンソーシアムが結成され普及拡大を図ったこと、雄武町では平成26年度には132haの耕作放棄地が解消されたこと(平成23年の雄武町内工作放棄地の約4割に相当)、産地から麺や菓子等の製品が販売され、消費者がダッタンそば製品を手軽に購入できる状況となったこと、などである。
しかし、まだまだ広く普及しているとは言えないダッタンそば。抗酸化作用の強いルチンが豊富なのはもちろんのこと、ビタミンB群も含むなど、栄養価も高い。さらに、乾燥や寒さに強く、厳しい条件下でも栽培できるという強みもある。そば栽培をめぐる環境は、輸入品との価格差があるなど必ずしも良いとは言えないが、近年の国際情勢の影響によるそばの実の国際価格の上昇で、輸入そばとの価格差は小さくなってきており、国産そばの需要が一層高まることも予想されている。国産のダッタンそばの今後の普及に期待したい。
(記事:総務部 山京)